ゴラジュデへ|戦争の体験談を語るわ

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ゴラジュデへ

今日も遅くなってごめん。それじゃ、またゆっくり書いてくね。

えっと、皆には心配をかけてしまって申し訳ないけど、俺の事はどうでもいいんですよ。
一連のユーゴ紛争について少しでも関心を持っていただければ、それでいいんだ。
わがままなことを言ってごめんね。

それから1ヶ月か2ヶ月ちょっとは、山の中で生活していたんだ。
フォーチャにはもう戻れないから、結構離れた山中で静かにしていたんだ。
幸運な事にさ、一緒に脱出した人の中に、ミジュヴィナからついてきてくれた
青年の一人が居て、薬とかを時々歩いて5時間くらいかけた所にあるらしい集落に
取りに行ってくれていたんだ。

ただ、食料は毎回のように貰いに行くわけにはいかなかった。
なぜなら、それで俺達の存在がスルツキの人々に知られてしまう可能性があったんだ。
だから、この山中での生活は、食べ物が少なくて辛かった。
食べられそうなものは何でも食べたんだ。葉っぱも食べたし、変な虫も食べた。
動物も居たけれど、捕まえられたのは数回だった気がする。食べ物が少なくて、
大人の人も生きている動物を捕まえるほど体力がなかったんだ。

それでさ、動物を捕まえたとしても、火は起こせなかったんだ。
夜といっても、月だとか星の光で煙が見えちゃうらしいんだ。
だから、動物の肉は生のまま、皆でわけあって食べていた。

水も、何時間も歩いた場所にある池から取ってきて、
濁ったまま飲んでいたんだ。それでも水が足りなくてさ、
ずっと空腹と喉の渇きに飢えていた。それに耐えられなくなった
俺達より少し上の子が、木の窪みみたいな所に溜まった水を
飲んでしまって、お腹を壊して、何日か経った後に亡くなった。

男の人が、何日かごとに結構離れた農地へ作物を盗りにいって、
野菜とかを手に入れてくるんだ。だけど、その食べ物は幼児や
赤ちゃんにおっぱいをあげなきゃいけないお母さんに食べさせて、
俺達を含めた他の人は、食べられそうなものを食べて我慢してた。

葉っぱはさ、たまに毒があるものがあって、最初のうちは見分けられなくて
舌がしびれたり、唇が腫れたりした。だから、食べる時はまず唇に10分くらい
つけて、それで大丈夫だったら口の中に入れて、そこからまた10分ぐらい
口の中に入れたまま、咬まずにしておくんだ。それでさ、舌に痺れだとか
痛みがなければ、よく噛んで飲み込んでた。美味しくはなかったけど、
食べられずにはいられなかった。

食べられるようになってた。特にイモムシみたいなのとか、何かの幼虫はおいしかった。
結構大きめのクモも、肉に歯ごたえがあって、味は鶏みたいな感じだった。
とはいっても、この時はずっと空腹で味覚も狂っていたと思うから、実際はそんなに
美味しいものではなかったと思うんだけどね。

色々と慣れてくるものだけど、一つだけ慣れないものがあったんだ。
それは夜の山なんだ。時折、別の山とかに移動して転々としていたけれど、
どの山も怖かった。別に幽霊だとか、動物が怖いわけじゃないんだ。

もしかしたら、スルツキの警察や民兵、軍がくるかもしれない。
もしかしたら、この場所が知られているかもしれない。
そんな恐怖が子どもや大人全員にあって、夜は必ず大人二人と
子ども一人が起きて、見張りをしていた。
それでも、物音がしたり、風で木が揺れる度に、皆が目を覚まして、
息を潜めてさ、場所を移動してもそれはその恐怖は消えなかった。

ごめん。書くのを躊躇っていたけれど、やっぱり書く。
この山中の生活でさ、子ども一人と年配の人が一人亡くなったんだけど、
俺達はその人の遺体を食べたんだ。とても気持ちが悪くて、最初は
吐いたんだ。吐いたけれど、食べないと死ぬぞって言われて、
皆泣きながら食べた。俺はさ、この時、別の肉もソニアやメルヴィナと
食べたんだ。そんな多い量じゃないんだけどさ。

フォーチャから脱出した時、俺はずっとさ、サニャの手を持ってたらしくて、
目を覚ました時にサニャの手がバックに入っていたんだよ。
捨てるに捨てられなくてさ、腐ってきていたけど、ずっと手元に置いていたんだ。
それでさ、今書いた人の肉を食べた後、お腹がすいたって鳴いているソニアを見てさ、
じゃあ、サニャの手を食べようって言ったんだ。

もう、サニャの手は腐ってて、臭いもきつかった。それでも、栄養があるものを食べなきゃって
自分達に言い聞かせて、メルヴィナも呼んで三人でこっそり食べたんだ。口の中に入れた瞬間、
へんな臭いと味が広がって、思わず吐きそうになったけど、サニャの分まで生きようって
三人で言い合って、食べた。

この時が、空腹とかの絶頂だったように思う。友達を食べるって、やっぱ違うんだよ。
一緒に行動していた人も大切な仲間だけど、やっぱりその人のとは違うんだ。
味とか臭いだけじゃなくて、言葉に言い表せない気持ち悪さとか悲しさとか
色んなのがごちゃまぜになった状態で、涙が出そうになるんだ。
声を出して泣きたい位の涙が出そうになるんだ。でも、出ないんだ。
水が殆どなかったからかもしれないけれど、サニャの手を食べた時は、
ソニアもメルヴィナも、もう泣かなかった。

ご飯食べてた人はごめん。それとちょっと少し落ち着きたいので、
休憩させて下さい、
今日は、可能な限り朝まで書くからさ。ごめん。

現実なんだよな
釣りじゃないんだよな

>>57 信じるも信じないも、全て皆の判断にお任せするよ。ここで俺が本当だ、信じてといっても、
俺が嘘をついて本当だと言っていたとしたら、意味がないでしょ。
ただ、こういった事が実際に起きた紛争だったと、起きたんじゃないかな、
そう思って、この紛争に、この地域にもっと関心を持ってもらえればそれでいいんだ。
辛ければ、信じなくてもいいんだ。ただ、どうかこの地で起きた一連の出来事を、
知って欲しい。そして、もっと関心を持って欲しい。上手く言葉に出来なくてごめんよ。

この時ぐらいからだったと思う。俺も含めて、ソニアやメルヴィナも
あんまり感情を表に現さないようになっていった。

そんな生活をして1・2ヶ月経った頃、皆の体力もかなり落ちていて、
このまま生活していても先がないという話になったんだ。
それで、本来の目的地だったゴラジュデに向かうことになった。
毎日日記はつけていたつもりなんだけど、フォーチャから脱出して
数日は記憶が殆どなかったせいで、正確な日にちはわからない。
だけど、恐らく6月に入って数日程度経った頃だったと思う。

ゴラジュデへの道のりは、大体3日間ほどだったんだ。
それでも、体力が落ちていた俺達には、過酷で辛かった。
ああ。

グーグルマップで>>1がいたであろうフォーチャ東の山を見てる
緑はあるけど結構ハゲてるところも多いな

>>66 ごめん。山の中にいたから、どこらへんかわからないんだ。 ただ、剥げているというか農地の場所とかはあったと思う。結構、人が近くに居たりする場所で
隠れて生活するには向いていない地域だったと今考えれば思う。

ゴラジュデに向かいだして二日目の昼頃。
山の中を進んでいくとは行っても、道路とか人の生活圏を完全に避けて通過するのは厳しかったんだ。
本来であれば、夜にそういった場所を通過した方が安全なのだけれど、
俺達には体力的にもそんな余裕がなかった。

この時は、丁度山道を横切る時だった。道の200Mぐらい手前で、道に銃を持った人間がいるのが見えたんだ。
警察か民兵か、それとも軍の兵士なのかは見分けがつかなかった。だけど、そこを通らないと山が越えられなかったんだ。

俺達、というか大人達は選択に迫られたんだ。このまま気づかれないように進むしかない。
だけど、それには大きな障害があったんだ。それは、赤ちゃんだったんだ。
赤ちゃんはさ、泣くのが仕事っていう位、よく泣く。このときは、元気もあまりなくて、
そんな泣くほどでもなかったんだ。それでも、もし万が一泣いてしまったら、俺達はつかまってしまう。
全員の安全の為には、赤ちゃんを連れて行くことはさ、出来なかったんだ。

でもさ、さっきも書いたように、俺ぐらいの子どもも、大人達も、赤ちゃんや幼児の為に
どんなにお腹が空いていても、我慢して、耐えて、その子たちに優先的に食べ物を
まわしていたんだよ。そんな簡単に、皆の為にといって、赤ちゃんを連れて行かない
なんて、決断は出来なかったんだ。

少しの間、沈黙が流れてさ、言いたいことはわかってる。だけど、誰も言い出せない状況が続いた。
ここまで一緒に行き抜いてきたんだ。こんな小さい赤ちゃんでも、皆にとっては大切な仲間で、
気持ちとしては、家族同然のようなものだったんだと思う。

赤ちゃんの母親はさ、皆が言いたいことは十分わかっていたんだと思う。そして、皆がそれを
言い出せないという事も理解していたんだと思う。誰も言い出さない中さ、笑いながら、
皆が言いたいことはわかるって。自分もこの子も、自分たちの為に皆が危険な目に合うのは
望まないって言ってさ。自分が母親だから、きちんと責任を持つって言ったんだ。
だから、皆は先に進んでください。この子とお別れをしたら、私も後から追からって。

何とも言えない空気の中で、そう言った母親は、さっき来た道を戻って行ったんだ。
大人たちは、母親の姿が見えなくなった後に、「すまない。」って一言二言いって、
武装したスルツキの近くを通過していくことにしたんだ。

スルツキ達が居る場所を過ぎて、少し数百メートル歩いたところで、俺達は数時間待ってたんだ。
母親が後から来るっていってたからさ。でも、結局母親は来なかった。

今思えばだけど、後から追うっていうのは、赤ちゃんの後を追うって意味だったんだろうな…。

次の日になると、先頭を進む人と、後方の人の距離がかなり広がっていた。
もう休んでいる時間も体力もない。もし休んだら、そのまま動けなくなってしまうような
状態だったんだ。だから、この時になると、暗黙の了解じゃないけど、
体力のない人はどんどん遅れていくようになった。幼児とかは、まだ小さいから、
体力のある大人が背負えるんだ。だけど、俺達ぐらいになると、体重が多少あるから、
背負えないんだよ。

もしかしたら殺せず二人で逃げたのかもしれないな

>>75
逃げ場なんてないんだ。前にも言ったけど、俺達がいた場所はさ、スルプスカ共和国って名乗る、
スルツキの領内だったんだ。どこに逃げても、味方なんていないんだよ。
だからこそ、俺達はゴラジュデへ向かったんだ。それ以外の選択肢なんてなかったんだ。

例え逃げたとしても、待っているのは死か、スルツキに捕まるかのどれかだったんだ。
そして、この時、スルツキに捕まるのは死も同然だったんだ。

そして、丁度最後尾に居たのは、俺とソニア、メルヴィナだったんだ。
ソニアは体力的にも、精神的にも参っててさ、俺とメルヴィナが引っ張りながら歩いていたんだけど、
子どもだからただでさえ歩くのが遅いんだ。引っ張りながらだと、さらに遅くなって、
全然追いつけないんだ。

気づいたら、俺達は皆とはぐれてたんだ。遠くの方からは、爆発音みたいな音とかが聞こえてきてて、
どこかでまたあのような惨状が繰り広げられているかもといった考えが過ぎった。
もしかしたら、大人が心配して引き返してきてくれるかもって思った。
だから、俺はメルヴィナにここで大人達を待とうって言ったんだ。
だけど、メルヴィナは駄目って言うんだ。
「戻ってこないよ。自分達で進まなきゃ。」
って言うんだ。

俺達は三人だけで、道もわからないのに、進んだんだ。メルヴィナがさ、
もしかしたら、味方が来てスルツキの兵士をやっつけてるかもって言うんだ。
確かに、そうかもって。何かにすがりつかないと前に進めなかった。
だから、俺達は、音がする方に味方がいるって希望を持って、
そっちに向かったんだ。

でも、それが間違いだった。

山と山の間に、少し開けたところがあって、俺達はそこに出たんだ。
あんなに体力が落ちてなければ、疲れていなければ、
もっと冷静に考えられたのかもしれない。
だけど、この時の俺達は、子どもでそこまで思考能力もなかったし、
そして疲れ果てていて、頭が回らなかったんだ。

開けた場所の半分くらいまで歩いた時だった。
横の道から、振動と共に何かが近づいてくる音がしたんだ。
もうさ、前の方からは爆発音とかがしてて、そんなの聞こえない
はずなのに、聞き間違いだって思いたかったんだ。
だけど、爆発音の合間に、何かが向かってくる音がするんだ。

味方かもしれない。でももしスルツキだったらどうしよう。色々不安と期待があった。
俺は怖くて、迷って、そしてその場で止まってたんだ。
そしたら、メルヴィナがとりあえず逃げなきゃって言ってさ、
俺はソニアの手をつかみながら全力で前の森というか、山に向かって走ったんだ。

それで、何とか木のところまで来て、良かった。何とか隠れられたって。そう思ったんだ。
それで後ろを振り返ったら、メルヴィナがいないんだよ。
何でって思ったら、メルヴィナがさ、メルヴィナがこんな時にだよ。
こんな時に限ってさ、転んじゃってるんだよ。

もう近づいてくる音もかなり大きくなっていて、振動もしてきていたんだ。
メルヴィナ早く立ってこっちに来いって叫んだんだ。
だけど、メルヴィナは立たないんだ。いや、立てないんだよ。
3日間も、殆ど寝ないで飲まず食わずで歩いてきたんだ。
体力的にも精神的にも、限界なんてとっくに通り越してたんだよ。

俺は助けに行かなきゃって、もう見つかってもいい。ここで俺がおとりになれば、
もしかしたら二人は助かるかもしれないって。それで飛び出してメルヴィナの所に
走って駆け寄ったんだ。
でも、メルヴィナを起こそうとしても、メルヴィナは足に力が入らない、立てないって
言うんだ。だけど、こんな所で見捨てるなんてできるわけないじゃないか。
ここまで一緒に行きぬいてきたのに、もう三人だけになってしまったのに、
見捨てるなんて出来るわけじゃないないか。

だから、メルヴィナを背負ったんだ。だけどさ、情けないよ。全然前に進めないんだ。
この時、俺は8歳で、小学3年ぐらいだったんだ。男女の差といっても、体格的にも、
肉体的にもまだそこまで差がなかったんだ。普段だったら、それでも何とか歩けたはず
なんだ。でも、この時の俺にはそんな力なんて残っていなかったんだよ。
頼むから前に進んでくれって頭の中で思っても、全然前に進めないし、
足のふんばりも効かないんだ。もう、向かってくる音はかなり鮮明になっていて、
金属音も混じっていたんだ。俺とメルヴィナの姿が相手に見られるのも、
時間の問題だった

俺はメルヴィナに大丈夫だから、俺が何とかするからって言ったんだ。
だけど、メルヴィナがさ。泣きながら、
「もういいから、ソニアの所に行って隠れて」って言うんだ。
そんな事出来るわけないじゃないかって怒ったんだ。
だけど、メルヴィナはこのままじゃ見つかるって。
今ならまだ間に合うって。今隠れれば、ソニアと俺は助かるって言うんだよ。

俺は嫌だ嫌だって言って、背負ったまま前に進もうとしたんだ。
そしたら、メルヴィナが暴れてさ、地面に落ちてしまったんだ。
すぐにまた背負おうとしたんだけど、メルヴィナがあばれて、
背負えないんだよ。何するんだって言ったらさ、
お願いだから隠れて!って。俺とメルヴィナが見つかったら、
ソニアはどうなるって、このままじゃ全員捕まっちゃうって叫ぶんだ
だから二人だけでも逃げてって泣きながら叫ぶんだ

俺は弱虫なんだよ。俺はメルヴィナの所に留まっておくべきだったんだ。
それなのに、体が勝手にソニアの所に向かってるんだよ。
何やってるんだよ やめろって自分にいっても、
体が勝手に逃げちゃうんだよ。

ソニアの所へ入る直前か、直後かわからない。
隠れて振り返ったら、戦車が向かってきていた。
メルヴィナは俺が隠れたのを確認したら、横になりながら体を
動かして俺達の方向に背を向けたんだ。

頼むから味方でいてくれって、敵だとしたら、気づかないでそのまま通り過ぎてくれって
そう祈った。だけど、現実は全然幸運なんてないんだよ。思ったとおりにならないし、
神様なんていなかったんだ。戦車はメルヴィナの横で止まって、上からスルツキの軍服を着た
兵士が出てきたんだ。

外務省のHP見てた
>1992年4月、BHの独立を巡って民族間で紛争が勃発し、3年半以上にわたり各民族がBH全土で覇権を争って戦闘を繰り広げた結果、死者20万、難民・避難民200万と言われる戦後欧州で最悪の紛争となった。
これか・・・

そんで
>日本は、1996年1月23日にボスニアを国家承認し、同年2月9日に外交関係を開設した。
っつーことは当時は日本大使館もなかったわけか。

ごめん。あんまり細かく書きたくない。ごめん。

降りてきた兵士はさ、メルヴィナの事を蹴ったんだ。メルヴィナは濁った叫び声を一瞬だしてさ、
生きているって確認した兵士は、笑いながら何かを言った。そしたらもう一人、兵士が出てきて、
暴れるメルヴィナを叩いて、服を脱がせて乱暴したんだ。たった8歳の少女に乱暴したんだよ。
メルヴィナは泣き叫んでもおかしくないのに、自分の口を手で押さえて、叫ばないようにしてるんだよ。

俺らに助けを求めないように、俺らが見つからないようにしてるんだよ
自分が酷い目にあってるのに、怖くて痛くて辛いはずなのに、
メルヴィナは自分よりも俺達を心配して、自分の口を押さえてるんだよ。

俺とソニアを助ける為に必死に耐えてたんだ

すぐにでも飛び出さなきゃいけない。助けなきゃいけない。
でも、それをしたらメルヴィナの行動は全て無駄になってしまう。
俺には決断できなかった。何でこんな選択をしなきゃいけないんだって、
山中の生活を通して、感情をあまり外に出せなくなっていたソニアや
俺は泣きながら見ていることしか出来なかった。

これが戦争なんだって。これが人間なんだって。これが神様の作った世界なんだって。
神様なんて、残酷な悪魔だと思った。

俺は本当に無力で、何も出来ない弱虫で、本当は俺があそこで殺されているべきなのに、
俺はメルヴィナに代わって死ぬほどの勇気を持っていなかったんだ。
持っていたとしても、それは本当の勇気だとか決意じゃなかったんだ。

日本に居る頃は、自分は何でも出来る、やろうと思えば何でも出来る人間だと思っていた。
だけど、実際の俺はあまりに無力で何も出来ない弱虫だったんだ。

ソニアはずっとごめんなさいと繰り返し言っていた。
俺は、メルヴィナが乱暴されて、連れ去られるのを見ている事しか出来なかった。
この時だったよ。今まで憎しみだとか、悲しみだった心が、自分には抑えられないぐらいの
怒りと殺意みたいなのに変わっていた。絶対にあいつらをころすって。
ころしたいって。

でもこれで>>1がそいつらを殺したら
今度はそいつらの遺族が>>1をぶっ殺したいって思うよね

>>117 だから俺は書いて誰かに伝えなきゃいけないんだ
それを誰かに伝えて、何かを感じて欲しいから書いてるんだ
もう少し待って、そしたら俺が伝えたいことが、何となくわかってもらえるかも
しれないんだ。

それから数時間くらい、俺とソニアはそこから動けないでいたんだ。
だけど、ここにずっと居たって何も変わらない。
俺とソニアは手を繋ぎながら、轟音止まない方向へ向かった。
世界は不幸なことばかりじゃなくて、幸せもあるかもしれない。
だけど、不幸幸せ不幸みたいに、交互に来るとは限らないんだ。
俺達は、ずっと目指していたゴラジュデに、沢山の大切な犠牲を払って
辿り着いたと思ったよ。だけど、街には入れないんだ。

http://www.youtube.com/watch?v=ydUA7w8XGAs
紛争時のサラエヴォの映像
>>1はこんな状況の中、街に居ることもままならなかったんだな

というか、>>129の動画でなんでこの人たちこんなところにいるの?
なのに、子供だけで山の中放浪って・・・

>>135 街から出れないからだよ。陸路で街に入る事も、出ることも出来ないんだよ。
包囲された街に残された人々には、包囲が解けるのを待ち続けて、
生き抜くしかないんだよ。援軍も見込めない中、いつ包囲が解けるのか、
それとも死ぬのか、わからないままそこで生き抜くしかないんだ

近づくことも出来ないんだ。もう、街はスルプスカの軍に包囲されて、
攻撃を受けていたんだ。山の中にもスルプスカの兵士が大勢居て、
全ての希望を打ち砕かれてさ。声も出なかった。

ここに留まることも、街へ入ることもできない。
俺とソニアは、世界で二人だけ取り残された気分になってさ、
でも諦めたら駄目だって。自分に言い聞かせて、
ゴラジュデから離れて延々と、山の中をあり着続けたんだ。

ごめん。山の中を歩き続けたんだ

ここらへんは、日記もちゃんとかいてなくてさ、何日歩き続けたかわからない。
でも、今思えば、約2ヶ月くらい山中で生活した経験がなかったら、
俺とソニアはここで死んでいたと思う。

歩き続けて何日目かわからないけどさ、小さな川というか湧き水みたいなところがあって、
そこで休んでいたら、銃をもった人が駆け寄ってきたんだ。スルプスカの兵士かと思ったけれど、
そうじゃなくてさ、ボシュニャチの民兵の人たちだった。

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